2026年10月1日放送のNHK『あしたが変わるトリセツショー』では、「認知症に先手を打つ!MCIのトリセツ」が紹介されました。
MCIとは、簡単にいうと健常と認知症の間の状態。
日常生活には大きな支障がないため、本人や家族も気づきにくいのが特徴です。
一つの目安になるのが、「以前と比べて、もの忘れが増えたかどうか」。
さらに家族など身近な人からもの忘れを指摘されている場合は、MCIの可能性もあると番組では紹介されました。
今回は、認知機能改善のための4つの方法や「自分はMCI?」と気になったときのチェックポイント、受診の目安までわかりやすくまとめます。
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【トリセツショー・MCI】認知機能を改善する4つの方法は?
今回の『トリセツショー』で紹介された、MCIの人の認知機能改善につながる4つの取り組みはこちらです。
| 4つの取り組み | ポイント |
|---|---|
| ①運動 | 脳の神経細胞や血流量を増やすとされている |
| ②頭を使う | ものを思い出そうとすること自体が大切 |
| ③食事の改善 | たくさんの種類の食材を摂る(おすすめはみそ汁) |
| ④生活習慣病の管理・改善 | 高血圧や糖尿病などを管理・改善する |
国立長寿医療研究センターの研究では、MCIの人が1年半にわたって4つの取り組みを続けたところ、認知機能の改善が確認されたと番組で紹介されました。
ポイントは、どれか一つだけを頑張るのではなく、できることを組み合わせて取り組むことです。
①運動
1つ目は運動です。

番組では、運動によって脳の神経細胞や血流を増やすことが期待されると紹介されました。
特別な運動だけでなく、日常生活の中で身体を動かし、それを継続することが大切です。
認知機能改善のための運動については、ウォーキングやスクワット、二重課題運動などを理学療法士の視点から図解しています。
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②頭を使うトレーニング
2つ目は、頭を使うことです。

今回印象的だったのは、難しい問題をたくさん解くことではなく、「ものを思い出そうとすること自体が大切」と紹介されたことです。
認知機能のトレーニングというと、難しい計算や脳トレを思い浮かべるかもしれません。
しかし、難しくすること自体が目的ではありません。
私自身、以前に認知症リハビリテーションに携わっていた際にも、簡単な計算や音読などを行っていました。
その方が無理なく取り組める難易度に調整することも大切だと考えています。
③食事の改善
3つ目は食事です。

番組で紹介されたポイントは、たくさんの種類の食材をとること。
「これを食べれば認知機能が改善する」という一つの食品に偏るのではなく、さまざまな食品を取り入れることが大切です。
④生活習慣病の管理・改善
4つ目は、生活習慣病の管理・改善です。

特に、
- 高血圧
- 糖尿病
などを適切に管理することも、認知機能を考えるうえで重要だと紹介されました。
認知症というと「脳だけの問題」と考えてしまいがちですが、身体全体の健康状態にも目を向ける必要があります。
なお、MCIの原因によっては、生活習慣の改善だけでは十分な効果を得られない場合があります。
必要な治療と並行して取り組むことが大切です。
実は認知機能改善に大切なのは「人との交流」
4つの取り組みに加えて、今回のトリセツショーが強調していたのが人との交流です。
研究では、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言でプログラムが一時中断。
人と交流する機会が減った時期に、参加者の認知機能も低下していたことがわかりました。
また番組では、高齢者のうつ状態と認知症の発症リスクとの関連も紹介。
研究者は、人との交流がうつ予防につながり、結果として認知機能低下を抑える可能性があると説明していました。
1日1回の電話でも交流になる
「人との交流」といっても、毎日誰かと直接会う必要はありません。
番組では、電話も交流になると紹介されました。
コロナ禍に高齢者へ1日1回、10分程度の電話を行った研究では、
- 孤独感を示す指標:約19%減少
- うつ症状を示す指標:約29%減少
という結果が報告されたとのこと。
電話では何を話せばいい?
「電話しても何を話したらいいのかわからない」という方もいるでしょう。
番組で紹介された話題は、とても簡単です。
- 元気かどうかを確認する
- 最近あったいいことを話す
これだけでもOK。
家族や友人に電話して、ちょっとした会話を楽しむことも「交流」の一つになります。
交流が苦手なら「社会とつながっている感覚」を
一方、人付き合いがあまり得意ではない方もいます。
番組では、そんな人にとって大切なのは、「社会とつながっている感覚」だと紹介されました。
たとえば、
- 好きな本を選びに本屋へ行く
- 趣味を続ける
- 興味のある場所へ出かける
などでも、社会との接点が生まれます。
無理に人付き合いを増やすのではなく、自分が楽しいと思える生活の中で社会とのつながりを持つことがポイントです。
MCIとは?「自分もMCI?」と思ったら
ここからは、
「最近もの忘れが増えたけど、自分もMCIなの?」
と気になっている方に向けて、番組で紹介されたチェックポイントを見ていきます。
MCIは「Mild Cognitive Impairment」の略で、日本語では軽度認知障害と呼ばれます。
簡単に表すと、
健常 → MCI(軽度認知障害)→ 認知症
の間に位置する状態です。
ただし、MCIになったら必ず認知症になるわけではありません。
MCIの段階から適切な対策や治療を行うことで、
- 認知機能を回復する
- 現在の状態を維持する
- 認知機能の低下を遅らせる
ことが期待できるケースがあります。
だからこそ、MCIの段階で気づくことが重要なのです。
MCIに気づくポイントは「もの忘れ」
MCIの主な症状の一つがもの忘れです。
ただし、「年齢を重ねて忘れっぽくなった=MCI」というわけではありません。
脳の仕組みで考えると、前頭葉が「覚えろ」と指示したことを、海馬が「保管」する仕組みが通常。
それが上手くいかないことが、番組では模型で解説されました。
| 加齢によるもの忘れ | MCIでみられるもの忘れ | |
|---|---|---|
| 特徴 | 海馬が情報を保管できる。 | 海馬が情報を保管できない。 |
| 本人・近しい人の気づき | ヒントがあれば思い出せる。 | ヒントがあっても思い出せない。 |
アルツハイマー病では、海馬から機能低下が始まると説明されました。
- もともと物忘れが多い場合は、性格。
- 前と比べて記憶力に変化があるなら、病気の可能性。
「最近忘れっぽい=MCI」というわけではありません。
一方で、以前とは違うもの忘れが増えてきた場合に、単なる年齢のせいと決めつけないことも大切です。
MCIのチェックポイントは?
東京医科大学の清水聡一郎 教授によると、
「ポカ」が増えると、MCIの可能性があると思ってもらえる
という説明でした。
特に、以下の内容がチェックポイントになります。
◆ 物忘れのチェックポイント
□予定を忘れることが増えた
□メールの返信を忘れることが増えた
□家電の操作が分かりづらくなった
そして、物忘れがあって心配、という人は、以下の2点を確認して下さい。
両方当てはまる場合は、MCIの可能性があります。
◆ 両方当てはまる場合は受診をお勧め
□ 以前と比べて物忘れが増えた
□ 家族などの身近な人から物忘れについて指摘がある
MCIの症状は「もの忘れ」だけではない
MCIで現れる変化は、もの忘れだけではありません。
番組では、受診のきっかけになった症状として次のような例も紹介されました。
【実例】物忘れ以外で受診のきっかけとなった症例
- 言語能力
- 言葉を話す・聞く・読む事が難しい
- 言葉が出てこないことが増えた
- 言葉を話す・聞く・読む事が難しい
- 空間認識
- 物体の位置や距離感などが認識しづらい
- 車や携帯ノボタンなどが認識しづらくうまく使えなくなってきた
- 物体の位置や距離感などが認識しづらい
- 無気力
- 当たり前にやってきた事を、やる気にならない
- やる気がない理由を答えるのが難しい
- 家事が以前よりおっくうに感じる
- 趣味が面倒に
- 以前より服装に無頓着に
こうした変化も、「以前と比べてどうか」という視点で考えることが大切です。
MCIかも?と思ったら何科を受診する?
「自分や家族がMCIかもしれない」と感じた場合、どこを受診すればいいのでしょうか。
認知機能について相談できる診療科や窓口としては、
- もの忘れ外来
- 認知症外来
- 脳神経内科
- 精神科・老年精神科
- 脳神経外科
などがあります。
どこを受診すればよいかわからない場合は、まずかかりつけ医に相談する方法もあります。
また、後ほど紹介する地域包括支援センターでも、地域の認知症に詳しい医療機関などについて相談できます。
なぜMCIは早めに受診した方がいい?
ここは今回のトリセツショーで、とても重要だと感じたところです。
認知機能が低下する原因は、アルツハイマー病だけではありません。
番組では、認知機能低下の原因は70種類以上あると紹介されました。
たとえば、
- アルツハイマー病
- 脳梗塞などの脳血管疾患
- 甲状腺機能低下症
- ビタミンB1・B12などの栄養不足
- 正常圧水頭症
- 薬の副作用
- 睡眠時無呼吸症候群
など、さまざまです。
そして重要なのが、原因によっては治療によって認知機能が回復するものもあること。
「年齢だから仕方がない」
「認知症だから治らない」
と自己判断せず、早めに原因を調べることが大切です。
なお、薬の副作用が原因になる場合もありますが、自己判断で薬を中止したり減らしたりせず、必ず医師に相談してください。
アルツハイマー病が原因ならMCIから治療できる場合も
番組では、抗アミロイドβ抗体薬についても紹介されました。
これは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβを除去する治療薬です。
対象となるのは、
- アルツハイマー病が原因のMCI
- 軽度のアルツハイマー型認知症
のうち、一定の条件を満たす人です。
この薬は、認知機能を元通りにする薬ではありません。
認知機能の低下を遅らせ、その人らしい生活を続けられる期間を延ばすことが期待される治療です。
こうした治療の選択肢があることも、早い段階で受診する意味の一つといえます。
MCIの相談先は?地域包括支援センターも
「病院へ行きたいけれど、どこへ行けばいいかわからない」
「親のもの忘れが心配だけれど、本人が受診したがらない」
そんな場合、番組で紹介されたのが地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者や家族のさまざまな相談に対応する地域の窓口です。
番組では、全国に9,000か所以上あると紹介されました。
①どの病院へ行けばいいかわからない
地域包括支援センターでは、地域の認知症に詳しい医療機関などの情報を教えてもらうことができます。
かかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談する方法もあります。
②家族が受診したがらない
認知機能の低下を心配して病院を勧めても、本人が受診を嫌がることもあります。
そんな場合も、地域包括支援センターの職員が本人の気持ちを確認しながら、受診につなげる支援をしてくれる場合があります。
本人だけでなく、家族から相談することもできます。
③人と交流する場所がない
地域包括支援センターでは、
- 認知症カフェ
- 地域のサロン
- 運動や交流ができる地域コミュニティー
などについて相談することもできます。
「交流した方がいいと言われても、どこへ行けばいいかわからない」という方にも利用できる窓口です。
理学療法士として認知症リハに関わって感じること
ここからは少し、理学療法士としての経験も交えてお話しします。
私は以前、老人保健施設に勤務していた際、2つの施設で認知症短期集中リハビリテーションの立ち上げに関わった経験があります。
当時も、身体を動かす運動だけを行っていたわけではありません。
簡単な計算や音読など、その方の認知機能に合わせた卓上課題なども取り入れていました。
そして現在も高齢者のリハビリに携わる中で、その経験はさまざまな場面で生きています。
認知課題は「難しければ難しいほどいい」わけではない
認知機能を維持するためには、
「もっと難しい問題をやった方が脳のトレーニングになるのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、私が認知症リハビリテーションに携わっていた頃から大切にしてきたのは、その方に合った難易度の課題を選ぶことです。
計算や音読でも、難しい問題を長時間考えてもらうのではなく、比較的スラスラと取り組める課題を活用していました。
「良くなってほしい」という思いが強いほど、家族や支援する側は、つい難しい課題に挑戦してもらいたくなることもあります。
しかし、
「できない」ことを繰り返すより、「これならできる」と感じながら取り組めることも大切。
これは現在の臨床でも意識しています。
声かけも「情報量を増やしすぎない」
もう一つ、私が大切にしているのが声かけの方法です。
認知機能が低下している方に一度にたくさんのことを説明すると、情報を処理しきれず、かえって動きにくくなってしまうことがあります。
そのため私は、
- 一度にたくさん説明しない
- 短い言葉で伝える
- 一つずつ伝える
- 必要なら実際に動きを見せる
- その方が理解しやすい方法を探す
ことを意識しています。
私の中では、「脳が快適に処理できる情報量にする」というイメージです。
今回のトリセツショーでも、運動や頭を使うことだけでなく、食事、生活習慣病の管理、そして人との交流まで紹介されました。
認知症対策は「難しい脳トレをする」ことだけではありません。
身体を動かす。人と話す。食べる。好きなことをする。そして社会とのつながりを持つ。
日々の暮らしそのものを整えていくことも大切なのだと、今回の放送を見て改めて感じました。
なぜ理学療法士が認知症対策にも関わるの?
理学療法士というと、筋力トレーニングや歩行練習など、「身体を動かす専門職」というイメージが強いかもしれません。
しかし高齢者のリハビリでは、身体機能だけを見るわけではありません。
認知機能や生活環境、その人が普段どのように生活しているのかまで含めて考え、できるだけその人らしい生活を続けられるよう支援することも大切な役割です。
私自身、認知症短期集中リハビリテーションに携わった経験を、現在の高齢者へのリハビリや声かけにも生かしています。
まとめ|MCIは「以前と比べて変わった?」に気づくことから
今回は『あしたが変わるトリセツショー』で紹介されたMCI(軽度認知障害)についてまとめました。
認知機能改善のために紹介された4つの取り組みは、
- 運動
- 頭を使う
- 食事の改善
- 生活習慣病の管理・改善
です。
さらに番組では、人との交流や社会とのつながりも大切だと紹介されました。
そして「自分はMCI?」と気になったときに、一つの目安になるのが、
「以前と比べて、もの忘れや生活の変化が増えていないか」
ということ。
認知機能低下にはさまざまな原因があり、原因によって治療や対策も異なります。
気になる変化が続いている場合は「年齢だから」と決めつけず、かかりつけ医や専門の医療機関、地域包括支援センターなどへ相談してみてください。
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