2026年10月15日(木)放送の『林修の今知りたいでしょ!』では、「疲れの新常識」をテーマに、疲労の正体が詳しく紹介されました。
なかでも驚いたのが、「乳酸がたまると疲れる」という昭和の常識が、今では変わっているということです。
さらに、一晩寝てもなかなか取れない疲れの原因として「脳疲労」に注目。
番組では、疲労が認知症やがんなど、さまざまな病気の原因にもなるといわれていることが、ナレーションやテロップで繰り返し紹介されました。
では、脳疲労とはどのような状態なのでしょうか?
この記事では、疲労研究の専門家・渡辺恭良先生が解説した脳疲労の仕組みや世代別の疲労調査を紹介します。
後半では、理学療法士として20年以上身体の働きに関わってきた視点から、乳酸・筋肉痛・筋肥大について、以前の常識と現在の考え方の違いも解説します。
乳酸は疲労物質ではない?昭和と令和の新常識
かつては、運動によって乳酸がたまることが疲労の原因だと考えられていました。
しかし、番組で渡辺恭良先生は、「乳酸が疲れの原因」という説は都市伝説だと説明しました。
さらに、乳酸はむしろ疲労回復を早める物質として紹介されました。
| 昭和の常識 | 令和の新常識 |
|---|---|
| 乳酸がたまると疲れる | 乳酸は疲労の直接的な原因ではない |
| 乳酸は体に不要な疲労物質 | 乳酸はエネルギー源として再利用される |
| 疲れは主に筋肉の問題 | 長引く疲れには脳疲労も関係する |
なぜ乳酸が疲労物質だと考えられていた?
番組によると、乳酸が疲労の原因とされた背景には、約100年前の海外の研究がありました。
その研究結果が誤った形で広まり、長年「乳酸=疲労物質」というイメージが定着したと説明されました。
しかし現在では、乳酸は体内で再利用される重要な物質と考えられています。
- 筋肉:運動時のエネルギー源になる
- 心臓:心筋のエネルギー源として利用される
- 脳:エネルギー代謝に関わる
- 肝臓:糖を作り直す材料になる
つまり、乳酸は単なる老廃物ではありません。
ただし、乳酸がエネルギー源になることと、乳酸を増やせば必ず疲労回復が早まることは別の話です。
脳疲労とは?一晩寝ても疲れが取れない原因
番組で渡辺先生が詳しく解説したのが、「脳疲労」です。
令和の新常識として、次の内容が紹介されました。
「なかなか取れない疲れ、一晩寝ても取れない疲れは脳疲労が原因と考えられる」
脳疲労が起こる仕組みを簡単にまとめると?
番組では、長引く疲労が起こる仕組みを、次の4つの段階で紹介しました。
- 活性酸素によって細胞が傷つく
- 細胞を修復するためのエネルギーが不足する
- 免疫細胞が反応し、炎症が起こる
- 自律神経系の機能が低下し、疲労が長引く
疲労が蓄積すると、短い休憩だけでは回復しにくい状態になると説明されました。
この仕組みについては、後半で詳しく紹介します。
体と心の疲れは脳が感じ取っている
渡辺先生によると、脳はとても疲れやすい臓器です。
その理由は、身体活動と精神活動の両方に関わっているため。
- 体の疲れを感じ取る
- 心の疲れも感じ取る
- 全身の働きを調節する
- 疲れたときには体を休めるよう指示を出す
脳は、いわば全身の機能を調節するコントロールタワーです。
しかし、疲れが蓄積して脳そのものが疲れ果てると、体を調節する働きも低下してしまいます。
番組では、この状態が長引く疲労につながると説明されました。
疲労を放置すると認知症やがんの原因に?
今回の番組では、疲労が認知症やがんなど、さまざまな病気を引き起こす原因にもなるといわれていることが、ナレーションやテロップで繰り返し紹介されました。
渡辺先生も、人間は疲れを甘く見がちだと指摘。
疲労の蓄積と病気の発症・重症化との関係について解説しました。
特に、がん患者の疲労の程度と予後との関係や、がん治療と並行して疲労を軽減する研究が進められていることも紹介されました。
疲労と病気の関係は重要な研究テーマです。
ただし、疲労そのものが認知症やがんを直接引き起こすと確定しているわけではなく、関連性と因果関係は区別して考える必要があります。
令和の今!若い現役世代は脳疲労を起こしやすい⁉
今回、もう一つ驚いたのが、世代別の疲労調査です。
番組では、若い人ほど疲れていて、年齢を重ねるほど元気な人の割合が増えるという結果が紹介されました。
20代の54.1%が高頻度に疲れている
調査では、疲労の状態を次の3つに分けて比較していました。
- 元気な人
- 低頻度で疲れている人
- 高頻度で疲れている人
番組で紹介された数値をまとめます。

| 年代 | 元気な人 | 低頻度で疲れている人 | 高頻度で疲れている人 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 13.9% | 32.0% | 54.1% |
| 30代 | 14.9% | 33.1% | 52.0% |
| 40代 | 15.9% | 35.2% | 48.9% |
| 50代 | 20.7% | 38.0% | 41.3% |
| 60代 | 29.9% | 42.0% | 28.1% |
| 70代 | 38.4% | 43.2% | 18.4% |
※「低頻度で疲れている人」は、100%からほかの2項目を引いて算出しています。
20代では、高頻度で疲れている人が半数以上。
一方、70代ではその割合が18.4%に下がり、元気な人は38.4%に増えていました。
特に注目したいのは、60代・70代になると元気な人の割合が大きく増えていることです。
渡辺先生によると、2017年から同じような傾向が見られているそうです。
若い人ほど疲れている理由は?
渡辺先生が要因の一つとして挙げたのが、SNSなどによる情報過多です。
さらに、若い現役世代には予定外の出来事が多いことも関係していると説明されました。
例えば、
- SNSなどで大量の情報に触れる
- 仕事で急な予定変更が入る
- 子育てで予定どおりに行動できない
- 複数のことを同時に考え、対応する
予定外の出来事が起こると、脳は対応するためにフル回転します。
こうした負担が重なることで、脳疲労を起こしやすくなると紹介されました。
脳疲労はなぜ起こる?ミトコンドリアと活性酸素の関係
ここからは、渡辺先生が説明した脳疲労のメカニズムを詳しく見ていきます。
① ミトコンドリアがエネルギーを作る
人間の体には、約30兆個の細胞があります。
それぞれの細胞が働くためには、エネルギーが必要です。
そのエネルギーを作る役割を担っているのが、細胞内のミトコンドリアです。
- ミトコンドリアは酸素を利用してエネルギーを作る
- その過程で活性酸素も発生する
- 通常は体内の抗酸化システムが働いている
活性酸素は、体内で常に発生しているものです。
② オーバーワークで活性酸素が増える
では、疲労が蓄積するとどうなるのでしょうか?
番組では、オーバーワークによって多くのエネルギーが必要になると、活性酸素も増えると説明されました。
- エネルギーの必要量が増える
- 活性酸素が増える
- 細胞の部品が傷つく
- 細胞の機能が低下する
番組では、細胞の部品が「錆びつく」という分かりやすい表現が使われていました。
通常は、休息や睡眠などによって体が修復する働きを持っています。
しかし、無理を続けると修復が追いつかなくなることがあります。
③ 免疫細胞が脳へ「休め」というサインを送る
機能が低下した細胞を免疫細胞が見つけると、体を守るための反応が起こります。
番組では、その情報が脳へ伝えられる仕組みが紹介されました。
- 免疫細胞が機能の低下した細胞を発見
- 脳へ「体を休めろ」というサインを送る
- 脳の自律神経系中枢がサインを受け取る
- 脳が全身の働きを調節する
ところが、この状態が長く続くと、調節を続けている脳にも負担がかかります。
④ 脳の調節機能が低下し、疲労が長引く
脳が疲れ果てると、全身の機能を調節する働きが低下します。
渡辺先生は、これが長引く疲労の原因となる「脳疲労」だと説明しました。
脳疲労が進むと、一晩寝ただけでは疲れが取れない状態になるというのが、今回の重要なポイントです。
脳の炎症とセロトニン不足が疲労の悪循環に?
番組では、慢性的な疲労を感じている人の脳画像も紹介されました。
その画像では、脳の炎症に関する研究結果が取り上げられていました。
渡辺先生は、脳の炎症とセロトニンに関わる神経系についても解説しました。
セロトニンは、睡眠や気分、痛みの調節などに関わる神経伝達物質です。
番組では、脳の炎症によってセロトニンの働きが低下すると、次のような悪循環につながると説明されました。
- 痛みを感じやすくなる
- 睡眠の質が低下する
- 十分に疲れが取れなくなる
- さらに疲労が蓄積する
つまり、脳疲労によって睡眠の質が低下し、その睡眠不足がさらに疲労を悪化させるという悪循環です。
なお、脳の炎症やセロトニンの変化は研究が進められている分野であり、すべての慢性的な疲労が同じ仕組みで起こるわけではありません。
疲労のコアメカニズムとは?番組で紹介された4段階
番組では、疲労が長引く仕組みを「疲労のコアメカニズム」として4段階にまとめていました。
| 段階 | 疲労のコアメカニズム | 番組で紹介された回復の目安 |
|---|---|---|
| ① | 活性酸素で細胞の部品~細胞自身に錆び | 簡単な休憩で改善 |
| ② | 細胞を修復するエネルギー不足 | 仮眠・睡眠の時間が必要 |
| ③ | 免疫系細胞が反応~炎症 | 改善に1日~数日 |
| ④ | 自律神経系の機能が低下 | 簡単な休息などでは改善されない |
この表を見ると、疲労は単に「疲れたから寝ればよい」というものではないことが分かります。
初期の段階では短い休憩で改善しても、疲労が蓄積すると、回復により長い時間が必要になると番組では説明されました。
ただし、この4段階は番組で紹介された疲労の仕組みを整理したもので、すべての人の疲労が必ずこの順序で進行するという意味ではありません。
理学療法士の身体考察|乳酸・筋肉痛・筋肥大の新常識
ここからは、理学療法士としての視点を少し加えたいと思います。
私は20年以上、理学療法士として筋肉の働きや身体の動きに関わってきました。
今回の放送で特に印象的だったのは、疲労を筋肉だけの問題として考えないことです。
そして、乳酸の話をきっかけに、筋肉痛や筋肥大についても、以前学校で習った知識と現在の考え方を改めて整理してみました。
乳酸は疲労物質ではない!運動後の筋肉では何が起こる?
かつては、運動によって乳酸がたまると筋肉が疲れると考えられていました。
しかし、現在では乳酸は単なる老廃物ではなく、筋肉や心臓、脳などでエネルギー源として再利用される物質であることが分かっています。
渡辺先生も番組で、乳酸はむしろ疲労回復を早める物質だと説明していました。
一方、運動中に筋肉が力を発揮しにくくなる現象には、さまざまな要因が関係しています。
- 筋肉内のエネルギー供給
- 筋収縮に関わるイオンバランスの変化
- 神経系による筋出力の調節
- 運動の強度や継続時間
つまり、運動で乳酸が増えることと、乳酸が疲労の原因になることは別なのです。
筋肉痛は筋線維の損傷が原因?筋肉が強くなる仕組みも変わった
以前は、運動によって筋線維が細かく傷つき、それが修復されることで筋肉が強くなると説明されることが一般的でした。
現在でも、慣れない運動による筋線維や周囲の組織への微細な損傷は、筋肉痛に関わる要因の一つと考えられています。
ただし、筋肉痛には炎症反応や痛みを感じる神経の働きなども関係しています。
さらに、筋肉が太くなる「筋肥大」については、筋線維が損傷すること自体が必須ではないと考えられています。
筋肉に適切な負荷がかかることで筋タンパク質の合成が促され、継続的なトレーニングによって筋肉は成長していきます。
つまり、筋肉痛が強いほど筋肉が成長するというわけではありません。
そして、今回の番組で紹介されたように、翌日以降の筋肉痛は乳酸が残っているために起こるものでもありません。
筋肉痛が出なくてもトレーニング効果はある
例えば、階段を下りるときの大腿四頭筋は、膝が急に曲がらないようブレーキをかけながら働いています。
このように、筋肉が伸ばされながら力を発揮する働きを遠心性収縮といいます。
慣れない遠心性収縮を伴う運動では、翌日以降に筋肉痛が起こりやすいことがあります。
しかし、同じ運動を繰り返すうちに、筋肉痛が出にくくなることも知られています。
これは「反復運動効果」と呼ばれる適応の一つです。
- 初めての運動では筋肉痛が出やすい
- 同じ運動を繰り返すと筋肉痛が軽くなることがある
- 筋肉痛がなくても、筋力や筋肥大の効果は期待できる
筋肉痛が出ないからといって、トレーニング効果がなくなったわけではないのです。
長引く疲れは筋肉以外にも目を向けたい
理学療法士としても、身体の疲労を考えるときには、筋肉の状態だけでなく、睡眠や活動量、精神的な負担などを含めて見ることが大切だと考えています。
今回の番組は、疲労を全身と脳の両面から考えるきっかけになりました。
ただし、一晩寝ても疲れが取れない状態が続く場合には、貧血や睡眠障害、内科的な病気などが隠れていることもあります。
長引く疲労をすべて「脳疲労」と決めつけず、必要に応じて医療機関へ相談することも大切です。
まとめ|渡辺恭良先生「疲労は予防できる」
2026年10月15日放送の『林修の今知りたいでしょ!』では、渡辺恭良先生が疲労の正体について詳しく解説しました。
今回のポイント
- 乳酸が疲労の原因という説は、昭和の常識だった
- 乳酸は体内でエネルギー源として再利用される
- 一晩寝ても取れない疲れには、脳疲労が関係する可能性がある
- 若い現役世代ほど高頻度に疲れを感じているという調査結果が紹介された
- 活性酸素・細胞の損傷・免疫反応・自律神経系の機能低下が疲労の仕組みに関わる
- 筋肉痛と筋肥大は必ずしもセットではない
そして、渡辺先生が伝えたのが、「疲労は予防できる」という言葉です。
疲れが限界になるまで無理をするのではなく、日頃から自分の疲労に気づき、休息や睡眠を大切にすることが重要なのだと感じました。
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