2026年8月9日放送の『情熱大陸』に、診療所医師でありパイロットでもある次田展之(つぎた のぶゆき)医師が出演しました。
次田展之医師は、瀬戸内海の離島にある診療所で地域医療に携わりながら、自らヘリコプターを操縦して島から島へ移動する、異色の経歴を持つ医師です。
さらに驚くのが、もともとプロのアクロバット飛行(曲技飛行)のパイロットとして活躍していたという経歴。
医学部在学中にアメリカで小型飛行機の操縦免許を取得し、世界的なエアショーパイロットに弟子入り。
帰国後は医師として勤務しながら、エアショーパイロットとしても活動する「二刀流」の生活を送っていました。
現在は、その操縦技術を離島医療に生かし、自らヘリコプターを操縦して患者のもとへ向かっています。
いったい、どのような経緯で医師とパイロットという2つの道を歩むことになったのでしょうか。
この記事では、『情熱大陸』に出演した次田展之医師について、プロフィールや経歴、アクロバットパイロット時代、現在取り組んでいる離島医療について紹介します。
医師でパイロットの次田展之は何者?wiki風プロフィール
まずは、次田展之医師のプロフィールを見てみましょう。
- 名前:次田 展之(つぎた のぶゆき)
- 生年月:1973年1月(53歳 2026年8月現在)
- 出身地:神奈川県
- 出身大学:日本大学医学部
- 職業:医師・パイロット
- 現在:医療法人心海会 理事長
- 主な診療所:百島診療所・佐木島診療所・岩城島診療所
- 趣味:柔術・総合格闘技
次田展之医師は、日本大学医学部を卒業後、日本大学医学部附属板橋病院に入局。
その後、帝京大学医学部附属市原病院、湘南第一病院、サガミホームクリニック副院長などを経て、2011年に広島県尾道市の百島に「百島診療所」を開設しました。
2018年には広島県三原市の佐木島に佐木島診療所、2026年には愛媛県上島町の岩城島にも診療所を開設しています。
現在は瀬戸内海の島々を行き来しながら地域医療を支えています。
一方で、その経歴をたどっていくと「医師」という言葉だけでは説明できない、かなり異色の人生を歩んできたことが分かります。
次田展之医師の異色の経歴|元アクロバットパイロット
次田展之医師は、医師になる前の日本大学医学部在学中から飛行機の操縦を始めています。
医学部在学中にアメリカで操縦免許を取得
次田展之医師が飛行機と深く関わるようになったのは、医学部在学中でした。
小型飛行機の操縦免許を取得するためアメリカへ渡った次田医師は、そこでアクロバット飛行を目にします。
アクロバット飛行とは、急上昇や急降下、旋回などを組み合わせ、飛行機で高度な飛行技術を披露する曲技飛行のことです。
その世界に魅了された次田医師は、世界的なエアショーパイロットとして知られるショーン・タッカー氏に弟子入りしました。
医学部で医師を目指しながら、一方では本格的なアクロバット飛行を学んでいたということになります。
「エアロック」に所属しプロのエアショーパイロットに
帰国後は医師の道だけを選んだわけではありませんでした。
日本大学医学部附属板橋病院に入局し、医師として勤務する一方で、パイロットとしての活動も続けます。

そして2002年には、日本のアクロバット飛行チーム「エアロック(AIRock)」に所属。
エアショーパイロットとして各地のエアショーなどで活躍しました。
つまり次田展之医師は、
「飛行機が好きな医師」
というレベルではなく、実際にプロのエアショーパイロットとして活動していた人物だったのです。
医師とパイロットという、どちらも高い専門性と責任が求められる仕事を同時に続けていたことにも驚かされます。
この経歴は、非常に異色の経歴であると言えそうです。
なぜアクロバットパイロットから離島医療へ?
プロのエアショーパイロットとして活躍していた次田展之医師ですが、その後、飛行技術はまったく違う形で医療へとつながっていきます。
次田医師がアクロバット飛行の世界で出会ったのが、日本のエアショー界を牽引した「ロック岩崎」こと岩崎貴弘さんでした。
次田医師は2002年に岩崎さんが率いるアクロバット飛行チーム「AIRock(エアロック)」に所属し、共にフォーメーション飛行などを披露しました。
しかし、次田医師がチームを離れてから2年後、岩崎さんは飛行訓練中の事故で突然亡くなります。
番組では、危険と隣り合わせの世界で空を飛び続けた岩崎さんについて触れながら、次田医師は「そういう精神を自分は受け継いでいる」と語っていました。
そして、「勤務医という安定した立場にずっといてはいけない」と考えるようになった次田医師。
「自分にしかできないことは何だろう」
と考え抜いた末、安定していた神奈川県での勤務医生活を離れ、瀬戸内海の離島医療へ飛び込む決断をしたそうです。
転機となった場所のひとつが、瀬戸内海に浮かぶ広島県尾道市の「百島(ももしま)」でした。
医師がいなかった百島に診療所を開設
百島は本州と橋でつながっておらず、島外へ移動するには船を利用する必要があります。
かつて百島には医師が不在の時期があり、島民にとって医療へのアクセスは大きな課題となっていました。

そこで次田展之医師は2011年、百島診療所を開設。
島に住みながら地域医療に携わるようになりました。
その後は百島だけではなく、2018年に佐木島、2026年には岩城島にも診療所を開設。
医療が届きにくい瀬戸内海の島々へ活動を広げています。
次田展之医師はなぜヘリで離島へ?
そして現在の次田展之医師を象徴するのが、ヘリコプターです。
診療のため離島へ向かう際、次田医師自身が操縦桿を握ります。
『情熱大陸』では、およそ10km先にある離島へ、自らヘリコプターを操縦して向かう姿も紹介されます。
なぜ医師自身がヘリを操縦するの?
瀬戸内海には、本州や四国と橋でつながっていない島が数多くあります。
島民が島外の病院へ行く場合には、船の運航時間に合わせて移動しなければならないこともあります。
反対に、医師が複数の島を回って診療する場合にも、船での移動には時間が必要です。
そこで次田展之医師が活用しているのが空路です。
自らヘリコプターを操縦できれば、船の運航状況だけに頼らず、複数の島をより効率的に移動できます。
医学部時代から培ってきた操縦技術が、現在では島民の医療を支えるための「移動手段」になっているのです。
「フライングドクター」とドクターヘリの違いは?
「医師がヘリコプターで患者のもとへ向かう」と聞くと、ドクターヘリをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、次田展之医師の取り組みは、一般的なドクターヘリとは少し異なります。
一般的なドクターヘリは、救急医療を目的として医師や看護師を現場へ運び、重症患者に早期から治療を開始するための仕組みです。
一方、次田展之医師の場合は、自身が医師であると同時にパイロットでもあり、ヘリコプターを「島から島へ診療に向かうための移動手段」として活用しています。
そのため、
「ヘリコプターに乗っている医師」
ではなく、
「医師自身がヘリコプターを操縦して診療へ向かう」
というところが大きな特徴です。
長年培ってきたパイロットとしての技術と、医師としての経験。
一見まったく異なるように見える2つのキャリアが、現在の離島医療でひとつにつながっています。
百島・佐木島・岩城島の3つの島で診療
2026年現在、次田展之医師は瀬戸内海にある3つの島の診療に携わっています。
百島診療所
広島県尾道市の百島にあり、2011年に開設されました。
次田医師が離島医療に本格的に取り組むきっかけとなった診療所です。
開設当初は600人だった島の住民は、現在は200人であることも併せて紹介され、最期まで島に住みたいという住民のためにも診療を続けておられるそうです。
佐木島診療所
広島県三原市の佐木島にあり、2018年に開設されました。
百島に続いて、医療へのアクセスに課題を抱える島の診療を担っています。
岩城島診療所
愛媛県越智郡上島町の岩城島にある診療所です。
2026年5月11日に新たに開設され、次田医師が診療する島は3つとなりました。
開設時の説明会では、「小児科は他に行ってください、なんて言えない」「全部診ます」という、次田医師がこれまでやってきた覚悟が伺える言葉も聞かれました。
3つの島はいずれも本州や四国とは橋でつながっておらず、島外へ移動する際には船などを利用する必要があります。
次田医師は、こうした島々をヘリコプターなどで行き来しながら診療を行っています。
開設当初の診療では、「やってもやっても患者さんがまだ待っている」ということにも触れたうえで、よっぽど困っていたんだ、という次田医師の気づきにも触れられていました。
次田展之医師の診療スタイルもすごい
次田展之医師が届けているのは、単に「病気を診る医療」だけではないようです。

『情熱大陸』の番組紹介では、島民の既往歴だけではなく、好きな食べ物や家族構成まで把握していることが紹介されています。
診察も白衣でかしこまって行うというより、普段着のまま、世間話をするような雰囲気で患者と向き合っています。
番組でも、ご夫婦の診察では、ざっくばらんにその場の人が会話する様子もあり、とても親しみやすい先生なのだと、会話の雰囲気から感じました。
2026年に開設した岩城島診療所では、40代で妻を亡くして一人暮らしをしている80代男性が不整脈への不安を訴える場面も紹介されます。
次田医師は心電図などで状態を確認したうえで、不安を抱える男性に分かりやすく説明。
冗談も交えながら笑顔でコミュニケーションを1度目から行える次田医師は、患者さんの気持ちをとてもくみ取っていると感じました。
番組では、診察を終えた男性からは「楽しかった」「いい先生だ、やさしかった」という言葉も聞かれました。
次田医師が語っているのが、
「島民はみんな家族」
という言葉。
地域医療として、「いかに救急にならないように診ていくかが大事」と語る次田医師。
医療機関が少ない離島だからこそ、病気だけではなく、その人がどのような生活をしているのかまで知ることが地域医療には重要なのかもしれません。
そして、それ以上に次田医師がそこにいることだけでも、ご年配の方々の気持ちも前向きになるように支えているようにも見えました。
理学療法士の視点|離島では「病院へ行くこと」そのものが大きな負担になる
理学療法士として地域の高齢者と関わっていると、医療は「病院があるだけ」で十分ではないと感じることがあります。
特に高齢になるほど、医療機関まで移動すること自体が大きな負担になります。
歩くことが難しい方であれば、家から港まで移動し、船に乗り、さらに港から医療機関へ向かうだけでも簡単ではありません。
また、高齢者では複数の疾患を抱えていたり、一人暮らしだったりすることもあります。
「少し調子が悪いけれど、わざわざ船に乗って病院へ行くほどではない」
と受診をためらうことも考えられます。
その意味でも、患者が医療へ出向くだけではなく、医療者側が患者の生活圏へ近づいていく仕組みには大きな意味があると感じます。
さらに、長期間同じ地域で診療することで、身体の状態だけではなく、
「普段どのような生活をしているのか」
「誰と暮らしているのか」
「以前と比べて何が変わったのか」
といった生活背景まで把握できます。
これはリハビリテーションでも非常に大切な視点です。
番組では、次田医師が週に1度訪問診療に向かう様子も紹介されました。
訪問診療の頻度は患者さんの状態や診療体制によって異なりますが、訪問看護の現場を経験してきた理学療法士としても、島民一人ひとりの暮らしまで継続して見守ろうとする姿勢が印象的でした。
検査結果や病名だけでは見えてこない「その人の生活」を知ることが、体調の小さな変化に気づくきっかけになることもあります。
現地の看護師との連携も紹介されました。
ヘリポートで次田医師を待つ看護師たちは、朝早くから食事も取らずに飛んでくる次田医師のためにお弁当を用意。食事を囲みながら、その日の患者さんについて情報共有する様子も映されていました。
医師がヘリでやって来るという派手な部分だけではなく、その医療を支えているのは、こうした現地スタッフとの日々のコミュニケーションなのだと感じます。
次田医師は、別れがあったという診療でも、訪問診療では関係性が「濃くなる」「人間だから」ということにも言及されていました。
コミュニケーションが素晴らしい次田医師。
島民にとっては、次田医師の言葉一つ一つに愛情を感じているのではと感じました。
元アクロバットパイロットという華やかな経歴に目が行きますが、その操縦技術を「自分にしかできない医療」へつなげているところに、次田展之医師の活動の大きな特徴があるのではないでしょうか。
まとめ|次田展之医師は医師×パイロットの経験を離島医療へ
今回は、『情熱大陸』に出演した次田展之医師について、プロフィールやアクロバットパイロットとしての経歴、現在取り組んでいる離島医療について紹介しました。
次田展之医師は、日本大学医学部在学中にアメリカで小型飛行機の操縦免許を取得し、アクロバット飛行の世界へ。
世界的なエアショーパイロットであるショーン・タッカー氏に弟子入りし、帰国後は医師として働きながら、日本のアクロバット飛行チーム「エアロック」に所属してエアショーパイロットとしても活躍しました。
その後、2011年に広島県尾道市の百島診療所を開設。
現在は百島、佐木島、岩城島の3つの島で地域医療に携わり、自らヘリコプターを操縦して島から島へと移動しています。
元アクロバットパイロットという経歴だけを見ると、とても華やかな人生に見えます。
しかし番組を通して印象に残ったのは、その飛行技術そのものよりも、危険と向き合ってきた経験を、医療の届きにくい場所で生かす道を選んだことでした。
医師とパイロット。
一見まったく違う2つの経験が、現在は「島民の暮らしを支える」というひとつの目的につながっています。
次田展之医師が語る「島民はみんな家族」という言葉にも、その生き方が表れているように感じました。
まったく違う2つの道を歩んできたからこそたどり着いた、「自分にしかできない医療」なのかもしれません。
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