2026年10月23日(金)放送のNHK『ドキュメント72時間』では、東京・浅草近くにある「ビルの中のお墓」が紹介されました。
今回の舞台は、東京都台東区にある「蔵前陵苑(くらまえりょうえん)」。
私が印象的だったのは、最新の自動搬送システムよりも、そこで過ごす人たちの姿でした。
毎週訪れて、1時間ほど亡くなった息子さんと向き合うご夫婦。お墓で知り合い、友人になった人たち。
お墓なのに、ゆっくり過ごせて、人が集える場所。
室内墓所には、そんな魅力もあるのだと感じました。
しかし、すべての室内墓所で同じようにゆっくりお参りできるわけではありません。
この記事では、ビル型のお墓のメリット・デメリットを整理しながら、故人と落ち着いて向き合える室内墓所の選び方を紹介します。
また、高齢者施設で働く理学療法士として、実際に墓じまいを経験した方から聞いた話もお伝えします。
ビルの中のお墓は何がいい?ドキュメント72時間で見えた魅力
今回の『ドキュメント72時間』で紹介された蔵前陵苑は、ビルの中にお墓がある「自動搬送式納骨堂」です。
専用のICカードをかざすと、遺骨を納めた厨子(ずし)が自動で運ばれ、墓参室でお参りできる仕組みになっています。
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お墓なのに、ゆっくり過ごせる場所だった
番組を見ていて感じたのは、室内墓所の居心地のよさでした。
- 屋根があり、雨や風を気にせず過ごせる
- 椅子に座って、故人とゆっくり向き合える
- 車椅子やベビーカーを利用する家族も訪れやすい
- 暑さや寒さを避けてお参りできる
- 家族が集まり、故人について語り合うこともできる
従来のお墓参りでは、墓石の掃除をしたり、草を抜いたり、お花やお線香を準備したりすることもあります。
もちろん、それも故人を大切に思う時間の一つです。
しかし、室内墓所では、そうした作業の負担が少ない分、故人と向き合う時間を持ちやすいのかもしれません。
番組では、1時間ほどお墓の前に座って過ごすご夫婦も紹介されました。
お参りを済ませて帰るだけではなく、その場所でゆっくり過ごす。
そんなお墓参りの形があることを、改めて感じました。
お墓で生まれる人と人とのつながり
さらに驚いたのは、お墓で知り合った人同士が友人になったというエピソードです。
室内墓所で顔を合わせるようになった方たちが、毎月連絡を取り合い、一緒に食事やおしゃべりを楽しむ関係になったそうです。
お墓で知り合って、友達になる。
考えてみれば少し不思議ですが、同じ場所に大切な人が眠っているという共通点もあるのですね。
お墓は、亡くなった人を偲ぶ場所。
でも、そこで出会った人との新しいつながりが生まれることもある。
今回の番組では、そんな室内墓所の意外な一面も紹介されていました。
室内墓所のメリットは?従来のお墓との違い
ビル型のお墓には、従来の屋外墓地と異なるメリットがあります。
主な特徴を表にまとめました。
| メリット | 理由 |
|---|---|
| 駅から近い | 公共交通機関で行きやすい施設が多い |
| 天候に左右されにくい | 雨や暑さ、寒さの影響が少ない |
| 手ぶらで参拝しやすい | お花や焼香などが用意される施設もある |
| 掃除の負担が少ない | 墓石の屋外清掃や草むしりが不要 |
| 永代供養に対応 | 後継者がいなくなった場合にも備えられる施設がある |
| セキュリティ | ICカードなどで管理する施設もある |
| 身体的な負担 | 段差が少なく、移動しやすい施設もある |
特に、交通の便がよく、天候を気にせずお参りできることは、何度も訪れたい人にとって大きなメリットです。
なお、花や焼香の設備、永代供養の条件などは施設によって異なります。
理学療法士が考える身体的なメリット
私は高齢者施設で働く理学療法士ですが、高齢者にとってのお墓参りは、意外と身体的な負担が大きいものだと感じます。
特に気になるのは、次のような環境です。
- 砂利道で足元が不安定
- 階段や段差が多い
- 歩行器のキャスターが動きにくい
- 車椅子で墓石の近くまで行けない
- しゃがんで墓石を掃除するのが大変
- 夏の暑さや冬の寒さで疲れやすい
こうした環境では、お墓参りに行くだけでも大きな活動になります。
さらに、私が気になるのは、帰宅後の疲労です。
「何とかお墓参りには行けたけれど、帰ってきたらぐったり」
そんな状況も考えられます。
その点、エレベーターがあり、段差が少なく、座って休める室内墓所であれば、身体的な負担を軽減できる可能性があります。
もちろん、すべての室内墓所が完全にバリアフリーとは限りません。
ただ、私が大切だと思うのは、お墓参りに行けることだけでなく、無理なくお墓参りを続けられることです。
年齢を重ねても、会いたい人に会いに行ける。
そんな環境があることは、高齢者にとって大きな魅力だと思います。
室内墓所のデメリットは?契約前に知りたい注意点
一方で、室内墓所には注意しておきたい点もあります。
特に、自動搬送式のビル型納骨堂は、従来のお墓とは管理方法が異なります。
| デメリット | 確認したいこと |
|---|---|
| 参拝時間の制限 | 開館時間・1回の参拝時間 |
| 混雑 | お盆やお彼岸の待ち時間 |
| 設備の老朽化 | 建物や搬送装置の修繕・更新体制 |
| 運営母体の問題 | 将来の管理・供養の継続体制 |
| 管理費 | 年間費用・改定の可能性 |
| 合祀への移行 | 移行する時期や条件 |
| 屋外墓地との違い | 自然の中で参拝する雰囲気は得にくい |
参拝時間や混雑には注意
ビル型のお墓は、基本的に開館時間が決まっています。
例えば、今回紹介された蔵前陵苑では、通常10時から18時まで参拝できます。
予約なしでお参りできますが、お盆やお彼岸などは混雑する場合があります。
また、施設によっては参拝時間について独自のルールを設けていることもあります。
「いつでも好きなだけ長くお参りできる」とは限らないため、確認が必要です。
永代供養でも、同じ場所にずっと安置されるとは限らない
もう一つ大切なのが、永代供養の条件です。
施設によっては、一定期間の経過後に遺骨を合祀する場合があります。
一方、後継者がいる間は個別の収蔵場所を継続して利用できる施設もあります。
蔵前陵苑では、建物が存続する限り厨子を使用できる仕組みですが、後継者がいなくなった場合などは永代供養墓へ移すことになっています。
同じ「室内墓所」でも、契約内容はさまざまです。
管理費だけでなく、将来の遺骨の扱いについても、契約前に確認しておきたいですね。
ゆっくりお参りできる室内墓所の選び方は?見学時のチェックポイント
今回の『ドキュメント72時間』のように、故人とゆっくり向き合いたいと思った場合、どのような室内墓所を選べばよいのでしょうか。
私なら、費用やアクセスに加えて、実際にお参りするときの環境を確認したいと思います。
参拝室は個室?椅子はある?
まず確認したいのは、参拝室の造りです。
室内墓所といっても、いくつかのタイプがあります。
- 完全個室でお参りできる施設
- 間仕切りで区切られた参拝ブース
- オープンな空間に納骨壇が並ぶ施設
- 共用の参拝スペースを利用する施設
周囲を気にせず故人と話したい方には、個室や間仕切りのある参拝室が向いているかもしれません。
また、長く立っていることが難しい方にとっては、椅子の有無も重要です。
特に高齢者の場合、座ってお参りできる環境かどうかは確認しておきたいところです。
参拝の時間制限はある?混雑時はどうなる?
次に確認したいのが、参拝時間です。
自動搬送式の納骨堂では、限られた数の参拝口を利用するため、お盆やお彼岸などに混雑する場合があります。
普段はゆっくりお参りできても、混雑時には次の人への配慮が必要になることもあります。
見学時には、次のようなことを聞いてみるとよいでしょう。
- 1回のお参りに時間制限はある?
- お盆やお彼岸はどのくらい混雑する?
- 参拝の予約は必要?
- 待ち時間が長くなることはある?
- 比較的空いている曜日や時間帯は?
故人と長く過ごしたい方にとって、こうした情報は意外と大切です。
故人に会いたいとき、気軽に訪れられる?
そして、もう一つ大切だと思うのがアクセスです。
駅から近いというだけでなく、実際に自宅から無理なく通える場所かどうか。
例えば、次のような点です。
- 自宅からどれくらい時間がかかる?
- 駅から施設まで段差は多くない?
- 雨の日でも通いやすい?
- 車椅子や歩行器で利用できる?
- 家族みんなで参拝できる?
- 開館時間は生活スタイルに合っている?
毎週お参りに行きたい人もいれば、仕事帰りに立ち寄りたい人もいるでしょう。
無理なく通えることは、故人との時間を大切にするための条件の一つだと思います。
見学時に確認したいチェックリスト
実際に室内墓所を見学する際は、次の項目をチェックしてみてください。
| チェック項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 参拝室 | 個室・間仕切り・共用スペースの違い |
| 椅子 | 座ってゆっくりお参りできるか |
| 時間制限 | 1回の参拝時間に決まりはあるか |
| 混雑 | お盆・お彼岸の待ち時間 |
| アクセス | 自宅から無理なく通えるか |
| バリアフリー | エレベーター・段差・車椅子対応 |
| 休館日 | 参拝できない日があるか |
| 永代供養 | 個別安置や合祀の条件 |
| 管理体制 | 故障時の対応や将来の設備更新 |
できれば、説明を聞くだけでなく、実際の参拝室や休憩スペースを見てみることをおすすめします。
「ここなら、落ち着いて故人と向き合えそう」
そう感じられる場所かどうかも、大切な選択基準ではないでしょうか。
実際に墓じまいをした高齢者から聞いた、意外な苦労
私は現在、高齢者施設で理学療法士として働いています。
利用者さんとの会話では、お墓や永代供養についての話題が出ることも少なくありません。
最近、実際に墓じまいをして室内墓所に移したという方から、興味深いお話を聞きました。
子どもに負担をかけたくないという思い
その方は、もともと有名な大きなお寺の一角にお墓を持っていたそうです。
しかし、将来のことを考えて墓じまいを決め、室内墓所へ移しました。
決め手になったのは、最終的に永代供養をしてもらえること。
お墓を継ぐ人がいないという理由だけではなく、残される家族への負担を減らしたかったそうです。
私が普段から高齢者の方と接していて感じるのは、自分が亡くなった後のことまで考えている方が少なくないということです。
「子どもたちに迷惑をかけたくない」
そんな思いが、お墓の選び方にも表れているのだと思います。
遺骨を乾かす必要がある?墓じまいで驚いたこと
その利用者さんから聞いた話で、私も驚いたことがありました。
それは、移転先の施設から「遺骨を完全に乾かしてから持ってきてください」と言われたことです。
私自身も、遺骨を乾かす必要がある場合があるとは知りませんでした。
「えっ、お骨って乾かさないといけないの?」
そんな話から、リハビリ室にいたほかの利用者さんや職員も一緒になって、話題になりました。
屋外のお墓に長く納められていた骨壺には、水分がたまったり、遺骨に湿気や汚れが付着したりすることがあります。
そのため、改葬先によっては、遺骨の洗浄や乾燥を求められる場合があります。
例えば、大阪市の海泉寺では、改葬する遺骨について、指定業者による洗骨・乾燥を求めています。
もちろん、すべての室内墓所で同じ対応が必要なわけではありません。
ただ、これから墓じまいを考えている方にとっては、事前に知っておきたいことの一つではないでしょうか。
元気なうちにお墓の準備をするということ
その利用者さんは、娘さんと一緒に墓じまいの作業を終えたそうです。
しかし、手続きには必要な書類も多く、かなり疲れたと話していました。
お墓を移すには、自治体での改葬許可の手続きや、現在のお墓の管理者との調整、新しい納骨先との契約などが必要になる場合があります。
実際にやってみないとわからない苦労もあるのですね。
それでも、元気なうちに自分で手続きを進め、将来のことまで考えて準備されたことは、すごいことだと感じました。
そして、私が何より印象に残ったのは、自分が亡くなった後、子どもたちに負担をかけたくないという、お母さんとしての気持ちです。
今回の『ドキュメント72時間』を見ながら、その方のことを思い出しました。
お墓を選ぶというのは、自分が入る場所を決めるだけではないのですね。
残される家族のこれからの暮らしを考えることでもあるのだと、改めて感じました。
ドキュメント72時間で印象に残った、故人と向き合う時間
今回の番組では、室内墓所を訪れるさまざまな人たちが紹介されました。
松戸にあったお墓を墓じまいして東京へ移した人、夫婦だけのお墓を選んだ人、亡くなった友人の七回忌に集まった人たち。
それぞれに事情があり、故人への思いがありました。
なかでも、特に印象に残ったエピソードがあります。
29歳の息子を亡くしたご夫婦の7年間
7年前に、29歳の息子さんを亡くしたご夫婦が紹介されました。
息子さんの死因は、急性心筋炎。
突然連絡が取れなくなり、様子を見に行ったときには亡くなっていたそうです。
ご夫婦は毎週室内墓所を訪れ、1時間ほどお墓の前で過ごしているとのこと。
お母さんは、もっと何かしてあげられたのではないかと考えることがあるそうです。
そして、お父さんが今回の取材で話してくれた理由について、心のどこかで誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない、と話していたことも印象的でした。
お母さんは、7年という月日の中で、少しずつ気持ちも変わってきたと話していました。
最後に、お墓の扉が閉まるとき、「またね」と言いながら扉をそっと撫でるお母さん。
その姿が、とても心に残りました。
毎週、故人に会いに来られる場所。
そして、何もせず、ただそこに座って過ごせる場所。
室内墓所のよさは、そういうところにもあるのかもしれません。
故人と話せる場所があること
番組では、普段は誰ともあまり話さないけれど、お墓に来て故人に話しかけるという方も紹介されました。
しょっちゅうお参りに来るので、嫌がられているかもしれない、と冗談めかして話す姿も印象的でした。
そうやって、亡くなった人に話しかけられる場所があること。
そして、会いたいと思ったときに訪れやすい環境があること。
それは、残された人にとって、大切なことなのではないでしょうか。
室内墓所は、生きている人が集える場所でもある
今回の放送を見終えて、私が一番強く感じたのは、お墓なのに人が集える場所だったということです。
屋根があり、椅子があり、落ち着いて過ごせる空間。
そこで故人に話しかける人がいて、家族で思い出を語る人がいて、新しい友人関係が生まれることもある。
お墓というと、亡くなった人が眠る場所という印象があります。
でも、今回の番組を見ていると、室内墓所は生きている人たちが集い、故人を通じてつながる場所にもなっているのだと感じました。
もちろん、従来の屋外墓地にも、それぞれのよさがあります。
自然に囲まれた場所でお参りしたい人もいるでしょう。
ただ、室内墓所には、気軽に足を運べて、ゆっくり故人と向き合えるという新しい魅力があるのだと思います。
まとめ|故人とゆっくり向き合えるお墓を選ぶために
2026年10月23日放送の『ドキュメント72時間』で紹介された、ビルの中のお墓。
今回の放送をきっかけに、室内墓所のメリットや選び方について考えてみました。
ゆっくりお参りできる室内墓所を選ぶなら、次の点を確認しておきたいところです。
- 参拝室が落ち着いて過ごせる環境か
- 椅子に座ってお参りできるか
- 参拝時間の制限や混雑状況はどうか
- 自宅から無理なく通える場所か
- 車椅子や歩行器でも利用しやすいか
- 年間管理費や永代供養の条件はどうか
- 将来も安心してお参りできる管理体制か
また、実際に墓じまいを経験した方のお話からは、手続きや遺骨の扱いなど、契約前には気づきにくいことがあると知りました。
お墓は、費用や仕組みだけで決められるものではありません。
故人とゆっくり向き合える場所かどうか。
そして、残された家族が無理なくお参りを続けられる場所かどうか。
今回の『ドキュメント72時間』を見て、そんな視点も大切にしたいと感じました。
お墓は、亡くなった人を偲ぶ場所であると同時に、生きている人が思いを伝え、人と人がつながる場所でもある。
ビルの中のお墓には、そんな新しい可能性があるのかもしれません。
【参考資料】
- 蔵前陵苑公式サイト
- 蔵前陵苑「よくある質問」
- ニチリョク堂内陵墓「よくあるご質問」
- 海泉寺「よくあるご質問」
- 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」
- NHK『ドキュメント72時間』2026年10月23日放送「東京 お墓参りはビルの中で」
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