2026年9月25日、愛知・名古屋アジア大会の男子100m準決勝が行われました。
日本代表として出場したのが、多田修平選手と小池祐貴選手です。
ともに予選を突破して準決勝に進みましたが、小池選手は10秒31(+0.4m/s)で3着、多田選手は10秒37(-0.3m/s)で6着となり、残念ながら2人とも決勝進出とはなりませんでした。
2人はともに住友電工所属。
100mの自己ベストを見ると、
- 小池祐貴:9秒98
- 多田修平:10秒01
その差は、わずか0.03秒です。
では、多田修平選手と小池祐貴選手はどっちが速いのでしょうか?
この記事では、2人の自己ベストや主な直接対決、ピッチ・ストライドなど走りの特徴を比較。
普段は理学療法士として人の身体や動きを見ている筆者が、100mを見るときに注目したいポイントについても考えてみます。
【アジア大会2026】多田修平・小池祐貴ともに準決勝敗退
2026年9月25日に行われたアジア大会男子100m準決勝。
日本代表の多田修平選手、小池祐貴選手はともに決勝進出とはなりませんでした。
結果はこちらです。
| 選手 | タイム | 風 | 順位 |
|---|---|---|---|
| 小池祐貴 | 10秒31 | +0.4m/s | 3着 |
| 多田修平 | 10秒37 | -0.3m/s | 6着 |
小池祐貴は10秒31で3着「中盤以降が伸びきらなかった」
小池祐貴選手は予選を**10秒33(-0.7m/s)**で通過。
準決勝では追い風0.4m/sのなか10秒31を記録しましたが、3着となり、惜しくも決勝進出を逃しました。
レース後、小池選手は**「悔しいですね」**と率直な思いを語っています。
予選から「しっかり修正したつもりだった」としたうえで、スタートについては**「昨日通りできた」**と一定の手応えがあった一方、
「中盤以降が伸びきらなかった」
とレースを振り返りました。
自国開催となった今回のアジア大会。
小池選手は会場について「いい雰囲気だった」と感じていたものの、そのなかで結果を残せなかったことへの残念な思いも語っています。
多田修平は10秒37で6着「今年は安定感がなかった」
一方、多田修平選手は予選を**10秒41(-0.9m/s)**で通過。
準決勝では向かい風0.3m/sのなか10秒37を記録し、6着となりました。
レース後、多田選手は、
「調子も上がりきらないままアジア大会を迎えてしまった」
とコメント。
「まだまだ力が及ばないという感じです」と悔しさを口にしながらも、今回の結果を次のステップにつなげたいという思いを語りました。
また、2026年シーズンについては、
「今年は安定感がなかった。その部分を頑張りたい」
と振り返っています。
2026年の日本選手権を制してアジア大会に臨んだ多田選手ですが、今回は準決勝敗退。
これにより、期待された男子100m決勝での多田修平選手と小池祐貴選手の直接対決は実現しませんでした。
多田修平と小池祐貴はどっちが速い?
では、改めて2人の記録を比較してみましょう。
自己ベストだけを見ると、小池祐貴選手の方が0.03秒速いです。
| 多田修平 | 小池祐貴 | |
|---|---|---|
| 生年月日 | 1996年6月24日 | 1995年5月13日 |
| 所属 | 住友電工 | 住友電工 |
| 100m自己ベスト | 10秒01 | 9秒98 |
| 100m PB記録年 | 2021年 | 2019年 |
| 200m自己ベスト | 21秒21 | 20秒23 |
| 60m(室内) | 6秒56 | ― |
小池選手は2019年7月、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会で9秒98をマーク。
日本人4人目の9秒台スプリンターとなりました。
さらに200mでは20秒23の自己ベストを持ち、この記録を出した2018年ジャカルタ・アジア大会では金メダルを獲得しています。
一方、多田選手は2021年6月の布勢スプリントで10秒01を記録。
室内60mでは6秒56の自己記録も持っています。
100mの自己ベストでは小池選手が上ですが、自己ベストだけで現在の実力や、その日の勝敗まで決まるわけではありません。
実際、多田選手は2026年の日本選手権男子100mを10秒17(+0.1m/s)で優勝。
5年ぶりの日本選手権制覇を果たしています。
つまり、
自己ベストでは小池祐貴選手。
一方、
2026年の日本選手権では多田修平選手が優勝。
そして今回のアジア大会準決勝では、小池選手が10秒31、多田選手が10秒37で小池選手が先着しました。
その時々で結果が入れ替わるところも、2人の比較の面白いところです。
多田修平vs小池祐貴の過去の対戦成績は?
多田修平選手と小池祐貴選手は、これまで国内大会などで何度も直接対決しています。
主なレースを見てみましょう。
| 大会 | 小池祐貴 | 多田修平 | 先着 |
|---|---|---|---|
| 2026年 アジア大会準決勝 | 10秒31 | 10秒37 | 小池 |
| 2026年 関西実業団選手権 | 10秒06 | 10秒10 | 小池 |
| 2025年 日本選手権 | 10秒30 | 10秒30 | 同着 |
| 2021年 レディス・アンド・ジェンツ | 10秒28 | 10秒26 | 多田 |
※大会・ラウンドによって条件が異なるため、ここでは主な直接対決を掲載しています。
特に印象的なのが、2025年の日本選手権。
2人とも10秒30でした。
自己ベストも9秒98と10秒01で、その差は0.03秒。
これだけ記録が近い2人だからこそ、同じレースを走ると注目したくなりますね。
多田修平と小池祐貴は走り方も違う?
100mは、単純に「足が速い人」が一直線に走るだけの競技ではありません。
大まかに見ると、
スタート
↓
加速
↓
最高速度
↓
速度をできるだけ維持
↓
ゴール
という流れがあります。
どの局面で強みを発揮できるかによって、同じ10秒前後の選手でもレースの見え方は変わります。
多田修平は「ロケットスタート」に注目
多田修平選手といえば、やはり注目したいのがスタートからの加速です。
多田選手は100mの10秒01だけでなく、室内60mでも6秒56という自己記録を持っています。
100mのスタート直後は、前傾した低い姿勢から身体を一気に前方へ加速させていきます。
今回テレビで見ていて改めて面白いと感じたのが、選手たちがスタート直後、地面を見ているような低い姿勢で走っていることでした。
理学療法士として見ると、この局面では単純な脚力だけではなく、
- 股関節を中心とした下肢の力
- 体幹と下肢の連動
- 接地した瞬間の力の伝達
- 前傾姿勢から徐々に身体を起こしていく動き
などにも目がいきます。
もちろん、テレビ映像だけから選手個人の身体機能を評価することはできません。
それでも、スタート直後から身体が徐々に起きていく様子を見るだけでも、100mが単純に全力で走るだけの競技ではないことが分かります。
小池祐貴はピッチにも注目
一方、小池祐貴選手は100mで9秒98、200mでも20秒23の自己ベストを持つスプリンターです。
日本陸連が公開している分析データを見ると、2人の違いがさらに興味深くなります。
自己ベスト付近のレースを分析したデータでは、
| 平均ピッチ | 平均ストライド | |
|---|---|---|
| 小池祐貴 | 5.110歩/秒 | 196.1cm |
| 多田修平 | 4.785歩/秒 | 208.8cm |
となっています。
このデータでは、小池選手の方が平均ピッチが速く、多田選手の方が1歩あたりの平均ストライドが大きいという結果です。
「スタートが速い=必ずピッチ型」とは限らないのも面白いところですね。
そして今回のアジア大会準決勝では、小池選手自身がスタートについては**「昨日通りできた」**と振り返る一方、
「中盤以降が伸びきらなかった」
と話しています。
スタートに一定の手応えがあっても、それだけで100m全体のタイムが決まるわけではない。
実際のレースでどの局面がうまくいき、どの局面で思うように伸ばせなかったのかを見るのも、100mの興味深いところだと感じます。
100mは自己ベストだけでは決まらない?理学療法士として注目したいポイント
小池選手の9秒98と、多田選手の10秒01。
差はわずか0.03秒です。
しかし、100mの記録を比較するときには、タイム以外にも見ておきたいものがあります。
その一つが風です。
陸上の100mでは、追い風が2.0m/sを超えると追い風参考記録となります。
小池選手が9秒98を記録したレースは+0.5m/s。
多田選手が10秒01を記録したレースは+2.0m/sでした。
今回のアジア大会準決勝でも、
- 小池祐貴:10秒31(+0.4m/s)
- 多田修平:10秒37(-0.3m/s)
と、それぞれ風の条件が異なります。
そのため、単純にタイムだけを並べて能力差と考えることはできません。
100mでは、
- スタートの反応
- 加速
- 最高速度
- 速度を維持する能力
- 風
- 気象条件
- 当日のコンディション
など、さまざまな要素がタイムに影響します。
日本陸連が山縣亮太さんの9秒95を分析した記事でも、最高速度だけでは実際の100mタイムを完全には説明できないことが紹介されています。
つまり100mは、
「一番高い最高速度を出せた選手が必ず一番速い」
というほど単純ではありません。
理学療法士として考えても、筋力だけでなく、接地したときに得られる力をどう推進力につなげるのか、身体各部をどう連動させるのかなど、さまざまな要素が10秒ほどの走りに凝縮されています。
今回、多田選手が「調子も上がりきらないままアジア大会を迎えてしまった」と話していたことからも、トップ選手がその日に自分の力を最大限発揮する難しさを感じます。
0.01秒を争う100m。
改めて、すごい世界ですね。
多田修平と小池祐貴は同じ住友電工!ライバルが近くにいる環境
もう一つ興味深いのが、多田修平選手と小池祐貴選手がともに住友電工に所属していることです。
小池選手は1995年生まれ、多田選手は1996年生まれ。
年齢も近く、100mの自己ベストも、
9秒98と10秒01。
日本トップクラスの実力を持つスプリンターが同じチームに所属しています。
もちろん、実際に2人がお互いをどのように意識し、競技にどんな影響を与えているのかは本人たちにしか分かりません。
それでも、自分と実力の近いトップ選手が身近にいる環境は、とても刺激が多そうだなと感じます。
2026年5月時点の「個人別10傑平均記録」でも、
- 小池祐貴:10秒076
- 多田修平:10秒093
と非常に近い数字です。
一度だけ出した自己ベストではなく、複数の好記録を平均してもこれだけ近い2人。
同じチームの仲間であり、日本代表として戦う仲間であり、100mではライバルでもある。
今回のアジア大会では決勝での直接対決は実現しませんでしたが、長く日本のトップレベルで競い合ってきた2人だからこそ、今後のレースにも注目したいと思います。
まとめ|多田修平と小池祐貴はどっちが速い?
今回は、アジア大会2026男子100mに出場した多田修平選手と小池祐貴選手を比較しました。
ポイントをまとめると、
- 自己ベストは小池祐貴9秒98、多田修平10秒01
- PBの差はわずか0.03秒
- 2人とも住友電工所属
- 小池選手は100m9秒98、200m20秒23
- 多田選手は100m10秒01、室内60m6秒56
- 日本陸連の分析データでは、小池選手は平均ピッチ、多田選手は平均ストライドが大きかった
- 2026年日本選手権は多田修平選手が優勝
- アジア大会準決勝は小池10秒31、多田10秒37
- 2人とも準決勝敗退となり、決勝での直接対決は実現せず
となります。
自己ベストでは、小池選手が0.03秒上。
一方、2026年の日本選手権を制したのは多田選手です。
そして今回のアジア大会準決勝では小池選手が先着しましたが、小池選手自身は中盤以降の伸び、多田選手は今季の安定感やコンディションについて課題を口にしました。
私自身、中学生の頃は陸上部で100mやリレーなどを走っていました。
とはいえ、競技実績を語れるようなレベルではありません(笑)。
現在は理学療法士として人の身体や動きを見る仕事をしているため、大人になって改めて100mを見ると、スタート、加速、ピッチ、ストライド、最高速度、そして速度維持と、わずか10秒ほどの中にさまざまな要素が詰まっていることに面白さを感じます。
今回のアジア大会では、2人とも決勝進出とはなりませんでした。
それでも、自己ベストだけで「どちらが速い」と決めるのではなく、その日のコンディションや風、100mのどの局面で力を発揮できるかまで含めて見ると、短距離走はさらに面白くなると感じました。
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