2026年6月21日の2026サッカーW杯チュニジア戦を見ていて、気になった方も多かったのではないでしょうか。
試合前のウォーミングアップの時点で、日本代表の選手たちはすでに汗だく。
「夜10時キックオフなのに、なぜこんなに汗をかいているの?」
と驚いた方もいたかもしれません。
実は、この試合が行われたメキシコ・モンテレイの環境は、気温こそ26℃前後だったものの、湿度が約80%と非常に高い状態でした。
そして、この環境は日本の梅雨時期や真夏の夕方のグラウンドと非常によく似ています。
つまり、日本代表が直面した環境は、実は私たちの子どもたちが普段の部活動や少年サッカーで経験している環境そのものなのです。
今回は理学療法士として20年以上身体を見てきた視点から、日本代表の試合から学べる熱中症・脱水対策について解説します。
W杯・対チュニジア戦の衝撃!なぜ夜10時なのに日本代表は汗だくだったのか?
2026年6月21日のメキシコ・モンテレイで行われたチュニジアとの決戦直前の、日本代表のウォーミングアップで、日本代表の選手たちが汗だくだった理由を見ていきましょう。
気温26℃でも危険?湿度80%が体温調節を難しくする理由
熱中症というと、「気温35℃以上の真夏日」をイメージする方が多いかもしれません。
しかし実際には、熱中症リスクを左右するのは気温だけではありません。
大きなポイントになるのが「湿度」です。
人間の身体は汗をかくことで体温を下げています。
正確には、汗そのものが冷たいのではなく、汗が蒸発するときに熱を奪うことで身体を冷やしています。
ところが湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなります。
すると、
・体温が下がらない
・心拍数が上がる
・疲労が蓄積しやすい
・集中力や判断力が低下する
という状態になります。
理学療法士として見ると、筋肉も熱の影響を大きく受けます。
体温が高い状態が続くと筋肉は疲労しやすくなり、後半に足が重くなったり、けいれんを起こしやすくなったりします。
スポーツ記事では見落とされがちな「高湿度」の怖さ
保護者の方から、
「今日は曇りだと熱中症などは大丈夫ですよね?」
と相談されることがあります。
しかし実際には曇りの日の方が湿度が高く、熱中症リスクが高くなるケースもあります。
特に日本の梅雨時期や夏の夕方は、
・気温28℃前後
・湿度70〜80%以上
という条件になることも少なくありません。
これは今回のモンテレイ戦の環境ともかなり近い条件です。
子どもは大人よりも体温調節機能が未熟です。
さらに夢中になると「喉が渇いた」「疲れた」というサインを自分で訴えないこともあります。
だからこそ保護者や指導者が環境を正しく理解することが大切です。
気温だけでなく「WBGT(暑さ指数)」を見るべき理由
最近は学校やスポーツ現場でも「WBGT(暑さ指数)」という言葉を耳にするようになりました。
WBGTは、
・気温
・湿度
・日射や照り返し
などを総合的に評価した熱中症指標です。
例えば気温がそれほど高くなくても、湿度が高ければWBGTは上昇します。
熱中症事故の多くは、実はこのWBGTが高い日に発生しています。
少年サッカーや部活動では、天気予報の気温だけでなくWBGTも確認する習慣をつけると安心です。
日本代表に学ぶ「暑熱順化」は、少年サッカー・部活で役立つ熱中症・脱水対策
暑さに体を慣らす「暑熱順化」とは?
今回のW杯でも各国代表は暑さ対策として「暑熱順化」に取り組んでいました。
暑熱順化とは、簡単に言うと
「暑さに身体を慣らしておく準備」
のことです。
暑熱順化が進むと、
・汗をかき始めるのが早くなる
・汗の量が増える
・体温が上がりにくくなる
・心臓への負担が減る
といった変化が起こります。
つまり暑さに強い身体を作ることができるのです。
少年サッカー・部活でできる安全な暑熱順化
暑熱順化は特別なトレーニングではありません。
むしろ日常生活の中で少しずつ行うことが大切です。
例えば、
・入浴をシャワーだけで済ませない
・ウォーキングを続ける
・軽いジョギングをする
・自転車に乗る
・外遊びをする
などでも十分効果があります。
理学療法士としておすすめなのは、「少し汗ばむ程度の運動」を継続することです。
急に炎天下で長時間練習するよりも、安全に身体を慣らしていく方が効果的です。
急に真夏の練習量へ戻すのが危険な理由
テスト期間や雨続きの後は要注意です。
数日運動を休んだだけでも暑熱順化の効果は徐々に低下します。
久しぶりの練習で、
「いつも通りやろう」
としてしまうと身体が暑さについていけないことがあります。
実際に熱中症事故はシーズン最初の暑い日や、長期休み明けに多いと言われています。
まずは運動量を少しずつ増やしていくことが大切です。
理学療法士が教える!少年サッカー・部活の脱水対策3つの鉄則
鉄則① 試合中だけでなく「前日夜」から水分を意識する
熱中症対策というと、試合中や練習中の給水ばかりに注目しがちです。
しかし実際には、グラウンドに立つ前から勝負は始まっています。
朝起きた時点で脱水状態になっている子どもは意外と少なくありません。
特に夏場は寝ている間にも汗をかくため、朝には体内の水分が不足していることがあります。
理想としては、
・前日の夕食時にしっかり水分を摂る
・寝る前にコップ1杯程度の水分を摂る
・起床後すぐに水分補給を行う
という流れです。
さらに、練習開始の30分~1時間前にも水分を摂っておくことで、身体の準備が整いやすくなります。
私自身、理学療法士としてスポーツをしている方を見ていると、「練習中の給水」よりも「練習前の準備」で差が出ることをよく感じます。
鉄則② 水だけでは不十分?塩分・糖分を含む飲み物の使い分け
大量に汗をかくと、水分だけでなく塩分も失われます。
そのため、長時間の運動では水だけを飲み続けるよりも、スポーツドリンクを適切に活用する方が望ましい場合があります。
ただし注意したいのは、スポーツドリンクの飲みすぎです。
糖分が多い飲料は胃にとどまりやすく、かえって吸収が遅くなることがあります。
最近はハイポトニック飲料と呼ばれる、体液よりも浸透圧が低いタイプのスポーツドリンクも増えています。
運動中は吸収の良い飲料を選び、
・普段の水分補給は水や麦茶
・長時間の運動時はスポーツドリンク
・体調不良や脱水症状が疑われる場合は経口補水液
という使い分けが基本です。
特に経口補水液は「熱中症予防のためのジュース」ではありません。
脱水が疑われるときに使用するものなので、普段から大量に飲む必要はありません。
鉄則③ 手のひらを冷やす!最新の外部冷却法
最近スポーツ現場で注目されているのが、身体の外から冷やす「外部冷却」です。
首元を冷やす方法は有名ですが、実は効率的に体温を下げる方法として注目されているのが、
・手のひら
・足の裏
を冷やす方法です。
手のひらには体温調節に関わる特殊な血管が集まっているため、冷却効率が良いとされています。
試合の合間やハーフタイム、給水タイムに、
・冷たいペットボトルを握る
・氷嚢を手のひらに当てる
・足裏を冷やす
といった工夫も有効です。
保護者の方でも比較的簡単に取り入れられる方法なので、覚えておくと安心です。
保護者・指導者が見逃してはいけない熱中症の初期サイン
足のつり(こむら返り)は筋肉からのSOS
サッカーの試合中や練習中、
「足がつった!」
という場面を見たことがある方も多いと思います。
もちろん疲労が原因の場合もありますが、脱水や電解質バランスの乱れが関係しているケースも少なくありません。
理学療法士の立場から見ると、筋肉が正常に働くためには適切な水分とミネラルが必要です。
大量の発汗が続くと筋肉が興奮しやすくなり、異常収縮を起こすことがあります。
足がつった時は、
「根性が足りない」
ではなく、
「身体が危険信号を出しているかもしれない」
という視点も大切です。
生あくび・返事が遅い・目に力がない時は要注意
熱中症の怖いところは、初期症状が分かりにくいことです。
保護者の方が見ていて気付きやすいサインとしては、
・何度もあくびをする
・ぼんやりしている
・返事が遅い
・表情が乏しい
・目に力がない
・ふらつく
などがあります。
子ども自身が
「大丈夫!」
と言っていても、身体は限界に近づいている場合があります。
普段の元気な様子を知っている保護者だからこそ、こうした小さな変化に気付けることもあります。
無理に続けさせず、休ませる判断が子どもを守る
スポーツの現場では、
「あと少しだから頑張れ!」
と言いたくなることもあります。
しかし熱中症は我慢して乗り切るものではありません。
体調がおかしいと感じたら、
・日陰へ移動する
・衣服をゆるめる
・水分と塩分を補給する
・身体を冷やす
といった対応を優先しましょう。
症状が改善しない場合や意識状態がおかしい場合は、速やかに医療機関へ相談することも大切です。
実は大人も要注意!エアコン時代に必要な「暑熱順化」
ここまで部活向けに編集してきた「暑熱順化」や「熱中症予防」についてですが、実は、大人にも当てはまる内容です。
汗をかかない生活が夏バテを招くことも
近年、親世代もエアコンの恩恵もあり、汗をかかない生活になってきていると言えます。
- 車移動
- エアコン生活
- デスクワーク
涼しく湿度も管理された快適な環境で過ごすことが多い現代では、汗をかく機会そのものが減っています。
私自身も理学療法士としてエアコンの効いた職場で働いていますが、意識しないと汗をかく機会が少なくなってしまいます。
そう考えると、暑さへの適応という意味では、実は子どもより大人の方が課題を抱えているケースもあるのかもしれません。
涼しく湿度も管理された快適な環境で過ごすことが多い近年、汗をかきにくくなっている、という意味では、子供よりも大人の方が深刻な場合もあるようです。
理学療法士がおすすめする「大人」の暑熱純化とは?
本格的な暑さを迎える前に、汗をかきやすいよう、体を慣らしていくことが大事な「暑熱順化」。
やりやすい方法は、以下の通りです。
- 朝10分の散歩
- 入浴
- 軽い筋トレ
- 階段利用
この程度の運動なら、実施可能なのではないでしょうか。
夏を元気に過ごすために大切なのは「少し汗をかく習慣」
暑熱順化、と聞くと、とても大層なことをしないといけないような気になるかもしれませんが、実は、難しく考えなくても大丈夫です。
軽い活動でも十分対応可能です。
急に炎天下で頑張る必要はありません。
日常生活の中で少しずつ汗をかく機会を作ることが、暑さに負けない身体づくりの第一歩です。
まとめ|日本代表の準備に学び、子どもたちの夏のスポーツを守ろう
W杯チュニジア戦で見られた日本代表の大量の発汗は、単なる「暑かった」という話ではありませんでした。
高温多湿の環境で最高のパフォーマンスを発揮するために、選手たちは事前準備や暑熱順化、適切な水分補給などを徹底していたのです。
そして、その考え方は少年サッカーや部活動にも共通しています。
私自身、20年以上理学療法士として身体を見てきましたが、熱中症は「気合い」で防ぐものではなく、「準備と知識」で防ぐものだと感じています。
子どもたちが安全にスポーツを楽しみ、夏の思い出をたくさん作れるように。
また、保護者などの大人の方たちも、同じように健康を土台に日常を過ごしてほしい。
日本代表の取り組みをヒントに、ぜひご家庭でも熱中症対策を見直してみてくださいね。
日本代表や海外選手の記事を理学療法士の視点でまとめています。サッカー関連記事はこちらからどうぞ。
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