バレーボール・ネーションズリーグ(VNL)を見ていると、
「今のスパイク、速すぎない!?」
「どうしてあれを拾えるの?」
「リベロって実は一番すごいのでは?」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
実は、世界トップレベルのバレーボールでは、男子で時速130kmを超えるスパイク、女子でも時速100kmを超えるスパイクが飛び交っています。
今回は、バレーボールのスパイク速度の目安や世界記録を紹介するとともに、理学療法士(PT)の視点から「なぜリベロがあのボールを拾えるのか」を身体の仕組みから考察します。
バレーボールのスパイク速度はどのくらい?
バレーボールのスパイク速度は、女子では一般的に時速80〜100km、男子では時速100〜120km以上が目安とされています。
世界トップレベルになると、その速度はさらに加速します。
| 競技レベル | 女子スパイク速度 | 男子スパイク速度 |
|---|---|---|
| 世界トップクラス | 時速100km〜120km+ | 時速120km〜135km+ |
| 日本代表 / トッププロ | 時速90km〜100km前後 | 時速120km前後 |
| 強豪高校生レベル | 時速100km〜115km | 時速120km〜130km |
強豪高校生の中には、プロ顔負けのスパイク速度を記録する選手も存在します。
現在の男子世界最速記録は、イラン代表の モルテザ・シャリフィ 選手が記録した時速139km。
女子でも世界トップ選手が時速121kmを計測した記録があります。
時速139kmといえば、高速道路を走る車よりも速いスピード。
これほどの速度のボールが、わずか18m×9mのコート内を飛び交っているのです。
女子バレーボールのスパイク速度はどのくらい?
女子バレーボールのスパイク速度は、一般的に時速80〜100km程度が目安とされています。
世界トップクラスの女子選手
世界の強豪国を代表するオポジットやアウトサイドヒッターになると、時速100〜120km級のスパイクを打ち込みます。
海外トップ選手の中には、時速121kmを記録したケースも報告されています。
日本代表・SVリーグトップ選手
日本代表やSVリーグ(国内トップリーグ)のトップアタッカーでは、時速90〜100km前後のスパイクが一般的です。
日本女子代表は世界と比較すると決して大型チームではありませんが、助走スピードや打点の高さ、コースの打ち分けによって世界と戦っています。
高校バレーでは?
春高バレー常連校のエースクラスになると、時速100kmを超えるスパイクを打つ選手も存在します。
一般的な高校女子バレー選手でも、フォームや筋力が完成してくると時速90km前後に達すると言われています。
男子バレーボールのスパイク速度はさらに速い
男子バレーボールでは、世界トップレベルになると時速120〜135km以上が一般的です。
女子と比較すると、身長や筋力、ジャンプ力の違いによって、さらに圧倒的なスピードになります。
世界最速は時速139km
現在、世界最速クラスとして知られているのが、イラン代表のスパイカーが記録した時速139kmのスパイクです。
もはや一般道を走る自動車並みの速度と言っても過言ではありません。
日本代表選手のスパイク速度は?
男子日本代表のトップアタッカーたちも、世界基準のスピードを誇ります。
特に、
- 石川祐希選手
- 西田有志選手
- 髙橋藍選手
といった選手たちは、試合中に時速120km前後のスパイクを打つことでも知られています。
世界との差が話題になることもありますが、スパイク速度だけを見ると、日本代表も十分に世界トップレベルと言えるでしょう。
そもそも時速130kmってどれくらい速い?
時速130kmを秒速に換算すると、約36m/秒になります。
ネット付近からレシーバーまでの距離は、およそ8〜9m。
つまり、時速130kmのスパイクは約0.25秒でレシーバーに到達する計算になります。
0.25秒。
これは、人が「熱い!」と感じて手を引っ込めるよりも短い時間です。
人間の反応速度では本来間に合わない
ここで興味深いのが、人間の反応速度です。
運動生理学では、視覚刺激を認識して身体を動かすまでの時間を「反応時間(Reaction Time)」と呼びます。
一般的な単純反応時間は約0.15〜0.20秒。
つまり、
- ボールを認識する
- コースを判断する
- 身体を動かす
- 腕を出す
という一連の動作を行うには、理論上ほとんど時間が残されていません。
言い換えると、
「見てから動いている」のでは、世界トップレベルのスパイクには間に合わない
ということになります。
リベロは「予測して動いている」
では、なぜリベロはあのボールを拾えるのでしょうか。
答えは、「予測」にあります。
リベロは相手スパイカーの、
- 助走の角度
- ジャンプの位置
- 肩や胸の向き
- トスの高さ
- ブロックの位置
といった膨大な情報を一瞬で処理し、ボールが飛んでくる前から動き始めています。
理学療法の世界では、このように未来の動きを予測して身体を先行して準備する仕組みを、
フィードフォワード制御(Feedforward Control)
と呼びます。
トップレベルのリベロは、このフィードフォワード制御を極限まで高めた存在とも言えるのです。
理学療法士のひとこと|リベロは「反射神経の選手」ではない
理学療法士として試合を見ていて感じるのは、リベロは単純に「反射神経が良い選手」ではないということです。
例えば、女子日本代表の 小島満菜美 選手や、男子日本代表の 山本智大 選手のプレーを見ていると、ボールが飛んでから動いているようには見えません。
実際には、
- スパイカーの助走スピード
- 肩や胸の向き
- トスの高さ
- ブロッカーの位置関係
などを瞬時に読み取り、ボールが打たれる前から身体の準備を始めています。
理学療法の世界では、このように未来を予測して先に身体を動かす仕組みを「フィードフォワード制御」と呼びます。
リベロは、この能力を極限まで高めたポジションと言っても過言ではありません。
また、もう一つ注目したいのが「一歩目の速さ」です。
トップレベルのリベロは、決して派手に飛び回っているわけではありません。
むしろ、最初の一歩でほとんど勝負が決まっています。
わずか数十センチ先に重心を移動させるだけで、時速100kmを超えるスパイクに身体を入れることができるのです。
これは筋力だけでは実現できません。
優れた予測能力、姿勢制御能力、そして身体操作能力が合わさって初めて可能になるプレーです。
VNLを観戦するときは、ぜひスパイクを打つ選手だけでなく、そのボールを拾うリベロの「最初の一歩」にも注目してみてください。
きっとこれまで以上に、日本代表リベロの凄さが伝わってくるはずです。
高速スパイクを生む「運動連鎖」とは?
一方で、あれほどのスピードを生み出すスパイカー側の身体能力も驚異的です。
スパイクは腕の力だけで打っているわけではありません。
床を蹴る下半身の力が、
脚 → 骨盤 → 体幹 → 肩甲骨 → 腕 → 手首
へと順番に伝わることで、最終的にボールへとエネルギーが伝達されます。
この身体の力のつながりを、バイオメカニクス(生体力学)では、
キネティックチェーン(運動連鎖)
と呼びます。
まさに「鞭(むち)」のようにしなる動きです。
この連動が崩れると、スピードが落ちるだけでなく、肩の回旋筋腱板(ローテーターカフ)への負担が増え、肩障害の原因にもなります。
トップ選手たちは、高い柔軟性と体幹の安定性を両立しているからこそ、怪我を防ぎながら世界最高レベルのスパイクを打ち続けることができるのです。
まとめ
バレーボールのスパイク速度は、
- 女子トップレベルで時速100km超
- 男子トップレベルで時速130km超
- 世界記録級では時速139km
という、想像以上の世界でした。
そして、その超高速スパイクを拾うリベロたちは、単に反射神経が優れているわけではありません。
相手の動きを読み、先を予測し、身体を先に動かす。
理学療法士の視点から見ると、リベロのプレーは「反射神経」ではなく、「予測と身体操作の芸術」に近い競技だと感じます。
次にVNLを見るときは、ぜひスパイクを打つ選手だけでなく、そのボールを拾うリベロの一歩目にも注目してみてください。
これまでとは違った視点で、バレーボールの奥深さが見えてくるかもしれません。


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