テレビやYouTubeで日本のアイドルとK-POPアイドルのパフォーマンスを見比べたとき、
「なんとなく雰囲気が違う」
「K-POPは迫力がある」
「日本のアイドルは親しみやすくて可愛い」
そんな印象を持ったことはありませんか?
もちろん、グループや振付師、楽曲によってダンススタイルはさまざまです。
しかし、理学療法士として身体の動きを見ると、骨盤の使い方や体幹の安定性、筋肉の使い方に一定の傾向が見えてきます。
今回は20年以上理学療法士として身体の動きを分析してきた視点から、日本のアイドルとK-POPアイドルのダンスを、解剖学やバイオメカニクス(生体力学)の考え方を交えながら分かりやすく解説します。
※この記事はダンススタイルを優劣で比較するものではなく、それぞれの魅力や身体表現の違いを考察する内容です。
ダンスの印象を左右する土台は「骨盤」にある
人の身体は、骨盤の位置によって動きやすさが大きく変わります。
K-POPは骨盤を前方へ使う動きが多い傾向
K-POPでは、骨盤をやや前傾方向へ保ちながら股関節を大きく使う振付が多く見られます。
LE SSERAFIM(ルセラフィム)の カズハさんの動きは、それが分かりやすい場面が多く感じられます。
この姿勢では
- お尻(大臀筋)
- 太もも裏(ハムストリングス)
- 股関節周囲の筋肉
が働きやすくなります。
そのため、
- 力強いステップ
- 大きなウェーブ
- 下半身から全身へ力が伝わる動き
を表現しやすくなります。
海外のダンスでよく見られる体幹のウェーブも、このような骨盤の使い方が土台になっていると考えられます。
日本のアイドルは軽快さを生かす動きが多い
一方、日本のアイドルダンスでは、骨盤をニュートラルから軽度後傾程度で保ちながら踊る振付も多く見られます。
FRUITS ZIPPERのダンスパフォーマンスは、とても親しみやすい雰囲気があるように感じます。
重心が高めになりやすいため、
- 軽快なステップ
- 跳ねるような動き
- 親しみやすい雰囲気
を演出しやすい特徴があります。
日本には古くから「ナンバ歩き」など独特の身体文化があり、「軽やかさ」や「柔らかさ」を美しいと感じる感性も受け継がれているのかもしれません。
筋肉の使い方にも違いが見られる
ダンスが「キレよく見える」のか、「可愛く見える」のかは、どの筋肉を中心に使うかとも関係しています。
日本のアイドルは大きな筋肉を使った表現が目立つ
日本のアイドルダンスでは、
- 太ももの前(大腿四頭筋)
- 肩周囲
- 腕
など、大きな筋肉をダイナミックに使う振付が多く見られます。
肩甲骨も大きく動くため、全身で感情を伝えるような表現になります。
観客も一緒に踊りやすく、「応援したくなる親近感」につながっているのかもしれません。
K-POPは体幹の安定性が非常に高い
一方、K-POPアイドルを見ると、激しく踊っていても頭の位置がほとんどブレません。
これは、
- 腹横筋
- 多裂筋
- 骨盤底筋群
などの体幹深部筋(インナーマッスル)が非常によく機能していると考えられます。
土台が安定しているからこそ、
- 手だけ動かす
- 首だけ動かす
- 胸だけ動かす
といったアイソレーション(身体の一部だけを動かす技術)が際立ちます。
「可愛い」と「かっこいい」は身体の使い方が違う
理学療法士として興味深いのは、両者が目指しているゴールそのものが違うことです。
日本のアイドルは親近感を演出する身体表現
日本では、
- 少し内股に見える立ち方
- 関節をあえて大きく使いすぎない
- 笑顔を引き立てる柔らかな動き
などが「可愛い」と感じられる文化があります。
股関節を軽く内旋方向へ使ったり、可動域を少し抑えることで、どこか守ってあげたくなるような印象を作っている場面も見られます。
K-POPは身体能力そのものを魅せる表現
一方、K-POPでは、
- 股関節の大きな可動域
- 胸椎のしなやかな動き
- 全員がほぼ同じタイミングで止まるシンクロ
など、「身体をどこまでコントロールできるか」が大きな魅力になっています。
これは単に筋力だけではなく、
固有感覚(プロプリオセプション)
と呼ばれる、自分の身体の位置を正確に感じ取る能力が高く鍛えられているからこそ実現できるパフォーマンスだと考えられます。
まさに、ダンサーであると同時にアスリートでもある身体能力と言えるでしょう。
理学療法士から見た日韓ダンスの違い
20年以上、身体の動きを分析してきた立場から感じるのは、
日本のアイドルは「感情や親近感を伝える身体表現」、
K-POPアイドルは「身体能力とコントロールを魅せる身体表現」
という違いです。
もちろん、近年は日本のアイドルもダンスレベルが大きく向上しており、K-POPにも可愛らしさを前面に出したグループがあります。
だからこそ、「どちらが優れている」という話ではありません。
目指している表現が違うからこそ、それぞれにしかない魅力が生まれているのです。
私は大学で比較文化を学びましたが、美しさの基準は国や文化によって異なります。
一般的に、欧米では身体能力や自己表現の力強さが高く評価される場面が多く、日本では「親しみやすさ」や「かわいらしさ」といった繊細な表現も、独自の美意識として発展してきたように感じます。
もちろん、すべての日本人が「可愛い系」を好み、すべての海外の人が「かっこいい系」を好むわけではありません。
日本でもクールなパフォーマンスを好む人がいますし、海外でも日本独特の「可愛らしいアイドル文化」に魅力を感じ、熱心に応援しているファンは数多くいます。
身体の使い方には文化的な傾向が見られます。
しかし、その魅力をどう感じるかは一人ひとり違います。
その多様性こそが、アイドル文化の面白さなのかもしれません。
まとめ
日本のアイドルとK-POPアイドルのダンスは、一見すると同じように見えても、身体の使い方には興味深い違いが見られます。
- 骨盤の使い方
- 体幹の安定性
- 筋肉の働き方
- 可動域の使い方
- 表現したい世界観
これらが組み合わさることで、それぞれ独自のパフォーマンスが完成しています。
次に推しのステージを見るときは、ぜひ「骨盤の動き」や「体幹のブレなさ」、「肩甲骨の使い方」にも注目してみてください。
理学療法士の視点で見ると、アイドルのダンスがさらに奥深く、面白く感じられるはずです。


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